夏休み 作文のコツ[完成版]
※ 7月の教室便りより転載
夏休みですねー。学生の皆さんにとって最も楽しみなイベントの1つである反面、寝違えた首の痛みみたいに気になるのがあれね、夏休みの宿題。できることなら早く終わらせたいわけですけど、「書く内容が思いつかない‥」とかなんとかで先延ばしになりやすいのが「弁論文」だったりしませんか?
まぁ文書書くの嫌いな人って多いしね。
今回はこの弁論文だとか人権作文を書く前に、意識してみてほしい「文書を書くコツ」を紹介します。苦手な人には難しく感じるかもしれないけど、長い文書を素早く正確に作るために大切なテクニックを5つ伝えるので、読んでみてください!
特に、「どうすればたくさん文章が書けるか」が分かるように書いていきます。
分かりやすいように、
「トマトが嫌い」という話を弁論文にするという設定で話してみますね。ではスタート!
《①主語と述語を意識する》
(主語を省略しないで必ず書く!)
まず意識してほしいのがココです。
「〜は」「〜が」等にあたる"主語"と、
「〜だ」「〜する/〜される」等にあたる"述語"を組み合わせて文書を作ること。そして慣れるまではそれをできるだけ省略せずに書いていくことをルールにしましょう。
これには、
・文章が分かりやすくなる
・文章の続きが考えやすくなる
というメリットがあります。
具体的に見ていきましょう。
例えばダメな例。
【トマトが嫌いです。なんであんなに不味いんだろうと思います。昔給食に出てきてすごく困った思い出があります。】
こんな風に文章を書く中学生、居ますよね。
まあ正直言ってバカっぽく見えてしまうし、何より困るのが、もうすでに書くこと無くなってきてません笑?
でね、上の文章を見て、「自分もこういう書き方しそう」と思ったキミ!
実はめちゃくちゃ損してるんです。
「自分はバカだから、たくさん書く内容を思いつかない」と思ったことない?
それは間違いです。
君はバカじゃない。
文章っていうのは、「短く言おうと思えば言えること」を、無理矢理引き伸ばして長く書く、書けるものなんです。
どういうことか?
次の例をみてください。
「主語をきちんと書く!」を意識して、文章を書いた例です。
【"私は"トマトが嫌いだ。もしかするとこの文章を読んでいる"あなたも"、トマトが嫌いかもしれない。"私の母などは"大層なトマト好きであった。"彼女は"、トマトの匂いを嗅いだだけでも嘔吐く(えずく)私を脇に見ながら、喜悦の表情で生のトマトを丸かじりしていた。‥】
どうでしょう。
文章が長くなったね。
国語の授業でよく聞く「段落」の感じに近くなったさ。
でもでも、長くなったけど、結局何を言ってるかって「トマトが嫌いだ」っていうことしか言ってないやんか?
作文てのは、そんなもんなんです。
まず主語をきちんと書くクセをつけよう。
それだけで長い文章を書くことがはできます。
なぜか。もしも同じ主語ばっかりが続いてたら、国語が苦手な人でも「変だな、不自然だな」って気づくでしょう?そうすると、意識しなくても工夫ができるようになります。色んな主語を使えるようになります。色んな主語を使っていけば文章は長くなるし、賢く見える文章になります。
文章を続けて書くのが苦手な人、
文章を1つ書いただけですぐに手が止まっちゃう人は、
「あー何書こう」じゃなくて、「次の文章の主語何にしよう?」と考えてみてください!
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さらに文章が得意な人には、以下のようなワザもおススメです。
[主語テク①一般化]
「私は」ではなくて「私たちは」という主語を使った文章を入れます。
話が普遍化・抽象化され、読み手を引き込むことができますし、賢く見えます。
例
【私はトマトが嫌いだ。私たちは事あるごとに、「好き嫌いは良くない!」と言われて育つ。だが、嫌いなものは仕方ない。一体いつから私たちはあんなものを食べるようになったんだろう。】
[主語テク②無生物]
人間以外のものを主語にします。
文章の幅がぐっと上がり、賢く見えたり、ユーモラスに見えたりします。ここでは「トマト」を主語にした文章を入れてみます。
例
【私はトマトが嫌いだ。トマトも私のことが嫌いなんじゃないだろうか。トマト界における私の評判について私が知る由はないが、仮にトマトが私を嫌っていなくても、私がトマトを嫌いでなくなる日は絶対に来ない。トマトの色は私を絶望させ、トマトの匂いは私から生きる気力の8割を奪う。】
[主語テク③名詞節]
前項の応用で、「文章」の最後に「〜こと」や「〜という事実」などの言葉をつけて、それを主語にします。これもやはりてっとり早く文章を長くしてくれますが、使いすぎるとかなり鬱陶しいです。
例
[私は+トマトが嫌いだ+コト]
↓
【私がトマトを嫌いだということは、クラス内では有名な事実である。先日給食にトマトが出た時などは、クラスメイトがこっそり私のお皿にはトマトが入らないように配慮してくれた。私が日頃地道にクラスメイトに向かってトマト嫌いを公言してきたことは、どうやら無駄ではなかったようだ。】
[主語テク④省略]
主語をあえて省略します。述語だけを反復することで、読み手を文章に引きつけることもできます。
例
【ほとんど憎しみに近い感情を抱いていると言えよう。赤い。丸い。甘い。甘いのに苦い。柔らかい。みずみずしい。僕は本当にトマトが苦手だ。】
《②一般化する(受け身と自発)》
①で、「主語を私、ではなく私たちにすると、話を一般化できて賢く見える」と書きました。
「私たちは」「我々は」「彼らは」「人は」「それらは」「これらは」などの主語を使うと、自分だけの話でなくたくさんの人の話ができ、そのことで視野が広がって、文章が賢っぽくかけます。
例
【私たちは、初対面の人と仲良くなろうと考える時によく「嫌いな食べものは?」という問いを発する。嫌いなスポーツ選手は?とか、嫌いな芸能人は?とは聞かないのに、どういうわけだか嫌いな食べ物は聞くのだ】
また、主語ではなく述語を「〜する」ではなく「〜される」と書ける形にすることで、「受身」「自発」のニュアンスを文章にそえると、その文章が「自分だけじゃなく一般的にそうだろう」というニュアンスを持ちます。
例
【食べ物について考えると、嫌でもトマトが思い起こされる。好きなのかって?ノー。嫌いなのだ。トマトはさまざまな料理に使われる。】
《③例え話をする》
文章を長く、また分かりやすくするためには「例え話」、また具体例や経験談がとても有効です。
全ての段落に入れると逆に文章が読みづらくなりますが、段落3つのうち1つくらいの間隔なら、例え話を入れても不自然じゃないと思います。
例
【私はトマトが嫌いだ。例えば地球規模の食糧難に見舞われて、食べ物がトマトかカレー味のウンコしか手に入らなくなったとすれば、私は迷わずにカレー味のウンコを食べる。それぐらいトマトが嫌いなのだ。】
少し難しいですが、例え話と似た形で「条件を設定する」というのも正確な文章を書く上では重要です。
《④問いを立てる。》
文章を考える段階でもそうですし、
文章の中でポイントになる話をしたい時や、文章にリズムを取り戻したい時には「質問をする」のが有効です。
先ほどの「例え話」の文章の続きを書くような形で、以下に例文を書いてみます。
例
【なぜこんなにも嫌いなのだろうか?野菜全般がそこまで嫌いなわけではない。見た目か?いや見た目はむしろちょっとオシャレな部類だろう。苦いからか?そんなこともない。どちらかといえば甘いと感じる。】
《⑤述語の作り方》
最初に、「主語に気をつけましょう!」という話をしましたが、文章を単調にしないためには述語の作り方にバリエーションを持たせることも重要です。逆に述語のパターンを反復したり統一することで、文章にリズムを生むこととできます(※主語テク④省略を参照)。
述語を作る時の考え方は、英語の文構造が参考にできます。
能動態と受動態を、そして5つの文型を使い分けましょう。
これは少し難しいですが、苦手な人は作文をするときにこれをチラチラ見ながら、チャレンジしてみてください。
余談ですが、概して日本の政治家の話が分かりにくく単調なのは、主語や目的語が曖昧なのと、二文型と三文型ばかりを使うせいだと思います。
(〜は)…する。
(〜は)…である。
(〜は)Aを…する。
(〜は)AにBを…する。
(〜は)AをBにする。
順番に使ってみますね。
例
【私は自覚する。自分は贅沢者である。私はある野菜を嫌っている。その自覚はしかし、私に力をくれる。その野菜は私のみならず、全国の子供を不幸にしているはずだ。】
…ちょっと制約が厳しくて強引になりましたが笑、だいたいこんなところかと思います。
《⑥オリジナルの言葉・概念を生み出す》
文章を書くのが好きな人は、文章の中に自分の考えた新しい言葉を入れると面白みが増すと思います。
例
【私はトマトが嫌いだ。野菜というある種宗教的な権威に守られて、スーパーや八百屋で偉そうに踏ん反り返っているが、一体何様のつもりだろう。昨今の健康ブームに乗っかって、テレビや雑誌までトマトのご利益を喧伝する始末だ。まるでトマトを嫌う人間は反知性的だとでも言い出さんばかりの勢い。これは立派な"トマハラ"じゃないかしらとさえ思う。】
トマハラね。大したことじゃないけど、文章のユニークさに繋がります。
以上ですね、
文章を書くのが嫌いな学生は、
「自分は本を読まないから言葉をしらないせいで文章が書けない」と思い込んでいたり、品詞で言うと助動詞(文末の処理)と接続詞に苦手意識を持っていることが多い気がします。
ですが、その2つに凝ってみたところで、文章を作ることの手助けにはあまりなりません。
1つ1つ、できるだけ単純に伝えたつもりですが、すぐに覚えて使いこなせるものばかりではないかもしれません。
ぜひこのブログを手元に置いて、実験をするみたいに楽しく作文してみてください!